第一回 ペリログ「歯周病によって引き起こされる症状と対策」

第一回 ペリログ「歯周病によって引き起こされる症状と対策」posts

目をとめて頂きありがとうございます。
皆さんこんにちは! サン歯科クリニックに勤務しています 林 鋼兵 と申します。
このブログでは歯周病についての情報をシェアしていきたいと思っています。

まずはペリログって何?と思う方いらっしゃると思います。
歯周病は英語でperiodontal diseaseと表記し、我々歯周病科医は頭文字をとってペリオと呼んでいます。そこでペリオに関するブログを親しみやすいように略してぺリログと名づけることにしました。これから定期的にこのぺリログを発信していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。

さて皆さん、突然ですがこんな症状を感じたことはありませんか。
歯茎がふっくら腫れた、歯がぐらぐらする、咬むと鋭い痛みがある、口から嫌な臭いがするなどなど etc
実はこれらは歯周病の症状に当てはまるのです。
そして歯周病は、歯肉炎、歯周炎、咬合性外傷という3つの疾患に分類できます。
これらの中で歯肉炎と歯周炎の2つに関しては原因はいわゆる歯垢 (プラーク) の形成です。プラークは細菌の塊なので、基本的には取り除かなければなりません。
ではそれぞれの疾患と治療法について順を追って説明していきましょう。

歯肉炎

まずは“歯肉炎”です。歯肉炎とはその名の通り歯茎に限局した炎症のことで、歯と歯茎の間の溝である歯肉溝 (しにくこう) に炎症が起きて、歯肉ポケットと言われる隙間を形成します。
症状としては、歯茎に赤みを帯びたり、歯茎から出血したりと症状としては軽度なのでこの時点で歯医者さんに来てもらえれば適切な歯ブラシ指導とクリーニングで改善できます。

次に“歯周炎”です。世間一般でいう歯周病、歯槽膿漏とはこれのことです。
昔は歯周病という言葉自体が認識されていなかったので歯槽膿漏と呼ばれていましたが、現在は歯周病、歯周炎という言葉が広まってきたのでここでは統一して歯周炎と呼ぶことにしますね。

歯周炎とはその名の通り歯の周りの組織の炎症のことです。
歯の周りの組織である歯茎、歯を支える骨である歯槽骨、歯の根を取り囲むセメント質、歯の根の周りのクッションみたいな役割を担っている歯根膜の4つを総称して歯周組織と言います。
歯周炎とはこれらの歯周組織に炎症が起きる疾患なのです。

一番皆さんが分かりやすいのが歯槽骨だと思いますので、ここからは私たちの歯を支えてくれている歯槽骨に焦点を当てて説明していきます。

まずは軽度歯周炎からです、先ほどの歯肉炎とは異なり歯周炎になってしまった時点で、歯周ポケットという病的な隙間を形成し、多少なりとも歯槽骨も溶けてしまいます。
しかし、この時点で歯医者さんに来てもらえれば適切な歯ブラシや歯間ブラシ、デンタルフロス (糸、糸ようじ) 指導によるプラークの除去、歯茎の上の歯石 (プラークが固くなったもの) の除去、場合によっては歯茎の中の歯石除去を行えば改善は可能です。

歯がぐらぐらする

次に中等度歯周炎です、ここまで進行すると注意が必要です。
中等度になると歯周ポケットも深くなり、歯茎からの出血、歯茎がふっくら腫れる、歯がぐらぐらする等自覚症状が強くなっていきます。

治療としては、軽度と同じように適切な歯ブラシや歯間ブラシ、デンタルフロス指導によるプラークの除去、歯茎の上の歯石の除去、歯茎の中の歯石除去はもちろんのこと、必要であれば咬合調整 (歯を削ってかみ合わせを調整) 、暫間固定 (揺れている歯を接着剤などで隣の歯と固定すること) を行います。

そして、これらを行っても改善しない場合は歯茎を切って、歯茎を開いて、実際に骨が見える状態で歯石やプラーク、不良肉芽組織 (炎症性の悪い組織) の除去を行うフラップ手術と呼ばれる歯周病の外科処置を行います。

こんな話を聞くと皆さん怖いですよね? 我々歯周病医ももちろん外科処置なんて本当はやらないことが一番だと思っています。

しかし、やらなければ症状が改善しなかったり、逆に外科処置を行って症状が改善したと言ってくださった患者さんをたくさん見てきました。
ですので、基本的な治療を行ってもなかなか効果が出ない患者さんにはこういった歯周外科処置も選択肢の一つだと考えています。

次に重度歯周炎です、いよいよここまでくると抜歯 (歯を抜く) が必要になってくるほど重症な状態になります。

中等度歯周炎の症状がより強くなり、ぐらぐらする歯も多数にわたりうまく咬めない、歯茎から膿が出たり等とにかく早くなんとかしないと手遅れになる、もしくはもう手遅れな可能性がある危険な状態です。

治療方法としては基本的には中等度歯周炎と同様ですが、基本的な治療の中に抜歯や、歯を抜いたところに何かかみ合わせが作れるもの (入れ歯、仮歯をつなげる等) を入れたり、暫間固定 (丈夫な歯を削ってぐらぐらしている歯とつなげる)、大幅な咬合調整を行うなど口の中全体のバランスを考えた高度な治療が必要になります。もちろん適応であれば歯周外科処置も行います。

中等度~重度歯周炎の場合は歯周組織再生療法といって先ほど説明したフラップ手術に歯周組織を再生することを目的とした再生材料を併用した治療法が適応になることも多いです。
こういった高度な歯周治療を行い、歯周組織に改善が見られたらいよいよ最終補綴装置 (最終的な咬める被せもの、入れ歯、ブリッジ、インプラント、特殊な入れ歯等) を装着できるのです。

重度歯周炎

家づくりもいい家を建てるには土台となる基礎工事が大切ですよね、しっかりとした基礎工事があって初めていい家が建てれますよね。歯周炎の治療も家づくりと一緒です。
ここまでくるにはどうしても治療時間がかかります。中等度~重度歯周炎の治療には最短でも1年~2年かかります。状況によってはそれ以上かかるかもしれません。

そして勘違いして欲しくないのは、歯周治療はここからがスタートなのです。

いままで時間とお金を使い徹底的に治療したとしても、すぐ症状が後戻りしたりしたら悲しいですよね。
それを防ぐために治療後の定期検診に通ってもらうことが大切です。定期的にお口の中をチェックしてもらうことにより問題点が早期に発見、早期治療につながります。
重要なことは歯周治療で症状が改善することだけでなく、その後どれだけ歯を長生きさせることが出来るかだと私は考えています。

最後に咬合性外傷です、この言葉はあまり聞きなれない言葉だと思いますので簡潔的に説明していきます。

咬合性外傷とはその名の通り咬み合わせによる外傷のことで、必要以上の咬合力 (咬む力) が加わることによって歯にダメージが起きて、骨が病的に溶けてしまうことです。
いわゆるブラキシズム (食いしばり、歯ぎしり、カチカチする) もこれに当てはまります。

特に歯周炎になって歯周組織が弱っている状態では通常の咬合力でも歯にダメージが起きてしまうのです。中等度以上の患者さんはほとんどの方がこの咬合性外傷を併発しているといっても過言ではないでしょう。治療としては、咬合調整、暫間固定、マウスピースの作製を行います。

厄介なことに歯周炎は感染症です。ですので歯周炎は完治はしないのです、歯周炎の治療の目的は歯周病原因細菌を減らして、口の中の症状を安定させることなのです。

その為に、皆さんにできることは、毎日の丁寧な口腔内ケア、定期健診で早期発見、早期治療をしてもらうことなのです。歯周炎を改善するためには我々歯科医師、歯科衛生士と皆さんの協力が必須なのです。

歯医者さんに足を運ぼう

最後になりましたが、これを読んでもらって歯周炎について正しく理解してもらい、頑張って歯医者さんに足を運んで、歯周炎患者さんがすこしでも減ることを願っています!

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